不妊症
不妊症の鍼灸治療の方針
器質性の不妊症、例えば卵管閉塞や大きくなった子宮筋腫、子宮内膜症における癒着などには一般的に西洋医学的な治療が必要になります。
一方、機能性(例えばホルモンバランスの乱れや、自然治癒力の低下、自律神経の変調など)の不妊症の改善には鍼灸治療がとても有効に働くことが多く、また薬物療法による副作用の軽減にも役立ちます。
鍼灸治療には主訴に直接的に働く作用もありますが、心身の働きを正常に整えることで全身的かつ継続的に不妊症の改善に役立つ間接的な作用もあります。東洋医学ではこの後者の作用をより重要と考えており、通常の治療はこの視点に立って行われます。
鍼灸治療の効果
特に鍼灸治療の効果には以下のようなものがあります。
- 子宮内膜の状態改善
- 妊娠しにくい原因となる冷え症などの全体的な体質改善
- ストレスの軽減
- 排卵誘発剤で低下した卵巣機能の回復
- 薬の投与などで現れた副作用の軽減 など
不妊症の鍼灸治療でよく使う経穴
一般的に不妊症の治療でよく使う経穴(ツボ)です。ご自身でも温めるなどして体のケアをすることができます。
- 関元
- おへそから指4本分下にあるつぼ。昔から精力が集まるといわれています。下腹部の血行を促すことで、子宮に栄養が行き渡り、子宮と卵巣、子宮内膜を正常に戻して妊娠しやすい体質へ改善させる働きがあります。
- 曲骨
- ちょうど子宮の上にある経穴で子宮点とも呼ばれます。直接子宮に刺激を与えることができ、子宮周辺の滞った血液を流し、固くなった組織を緩め子宮の働きも高めます。
- 横骨
- 卵巣の上にある経穴で卵巣点とも呼ばれます。この経穴への刺激を長く続けることで、卵巣の働きがよくなり、排卵が正常に行われるように促されます。
- 三陰交
- 肝経、腎経、脾経の交わる部分で、ホルモンの働きを調節する大切な経穴です。
タイミング療法と鍼灸治療
タイミング療法を行っている場合は、できるだけ卵胞や子宮内膜の状態がよくなるよう「腎」の働きを整える経穴を使って治療していきます。またお灸などで下腹部を温め血行を促すことで、子宮と卵巣にも栄養をしっかりと送り届けて活力を与えます。
人工授精(AIH)と鍼灸治療
人工授精や体外受精を選択する要因のひとつとして「抗精子抗体」があげられます。クラミジアなど卵管の炎症があるときや、原因がわからず起こるケースもあります。鍼灸治療では生殖能力と深くかかわりのある「腎」の働きを高めながら、免疫機能も整えていきます。副腎皮質ホルモンの分泌を高める効果もあり全身の機能を整えるいことができます。
体外受精(IVF)と鍼灸治療
体外受精の成功率を上げるには妊娠を成立、維持させるホルモンが不可欠です。東洋医学では、女性がリラックスして満足感を得られると全身のホルモン代謝が高まり妊娠しやすい状態になるといわれています。体外受精を行う前後に鍼灸治療を受けると妊娠の確率がさらに高まるという報告もでています。