不妊治療をオープン、常に前向きで治療
不妊症(不育症)治療・出産体験インタビュー
不妊治療を職場にもオープンにして、常に前向きで治療に向かい妊娠・出産に至った事例
回答者プロフィール・治療歴
渡辺さん(仮名)
東京都世田谷区 36歳 結婚 8年目 ※出産時
2013年 | |
6月 | 不妊治療開始(P病院) AMHが低いことが発覚。てっとり早いのは体外受精だと医者に言われ、あまり良く考えず「やります」と返事……。 |
7月 | 2個採卵→2個とも受精せず |
8月 | 1個採卵→2分割で移植→着床せず(ICSI) この後、何となくお休み |
10月 | 転院(Fクリニック) 採卵(2個)→胚盤胞にならず(ICSI) |
11月 | 採卵(2個)→胚盤胞にならず(ICSI) |
12月 | 採卵(6個)→1個胚盤胞に→凍結(ICSI) |
2014年 | |
1月 | 凍結胚移植→妊娠 |
2月 | 稽留流産→手術 |
5月 | 採卵(6個)→胚盤胞にならず(ICSI) |
6月 | 採卵(2個)→1個胚盤胞に→凍結(ICSI) |
7月 | 移植→妊娠 |
2015年 | |
4月 | 自然分娩で出産 約3600g |
インタビュー本文
インタビュー日時 2016年5月
◆…聞き手
通院開始
インタビューよろしくお願いいたします。
不妊治療開始はどういうきっかけで始めてみようかなと?
35歳から妊娠率が「ぐっと下がる」と耳にしたので。子宮頸がんの検診も兼ねて婦人科に行こうと思って、そういう(不妊症の)検査もしている病院に行きました。
最初の病院を選ばれた基準というのは
(住んでいる所と)同じ区内でキレイそうで、ホームページの感じが良かったからです。
それで初診は?
予約して結構1ヶ月くらい。別にそんなに急いでいなかったので待ちました。
病院に行かれてみて最初の印象は?
「キレイだな」というのと「(治療に来ている)人がやっぱり多いんだな」と思いましたね。
すぐに体外受精へステップアップ
初めてだったので、なんかもうよくわかんないまま……最初は血液検査でしたかね。
その時にAMHが低いということがわかったんですね。
結果を聞きに2週間後くらいに行ったら「AMHが低いので、もし早く妊娠したいのなら体外受精も考えたほうがいいですよ」というふうに言われたんです。
卵管造影検査はしていないですよね。
してないです。はい。
じゃ、すぐに体外受精を?
それで次に行った時に、自分でも謎なんですが、その時もう「(体外受精を)やります」って感じで、急にやる気に(笑い)。まわりくどいのがあんまり好きじゃないんで。なんかもう「いいかな」って。
すぐに採卵しているんですよね。
そうです。翌月に採卵しているんですよね。
採卵
最初の病院では採卵は2回。1回目は残念ながら受精せず。2回目は新鮮胚で移植を?
そうです。
2回とも採卵方法を覚えていらっしゃいますか?
1回目は麻酔して、2回目はしなかったです。なんか1回目は「卵巣がちょっと奥まっているから痛いかもしれないから(麻酔を)した方がいい」みたいなことを言われて、2回目はそれを言われなくて……麻酔しなかった。
採卵2回は違う先生に?
違う先生でした。
2回目の採卵は痛くはなかったですか?
なんか私は割と平気……なんかこんなもんだろうなという痛みですよね。
ここでの採卵は2つとも残念ながら着床しなかったんですね。
転院
その後、2ヶ月ほどお休みを。
そう、なぜか休んだんです。一回やってダメだったから……。別に何も考えないでやらなかったんですね。そうしたらちょうどその頃に友だちがうちにきて、その友だちが「病院に行った」っていう話になって。
不妊治療のクリニックに?
それで、その次の病院Fクリニックに行って……。その子はそのFクリニックに一回行ったら、その次で自然妊娠したんですよ。結局初診だけしか(その友だちは)行かなかったんですけど……。
そこでは別に不妊治療をせずに?
してない。初診だけでなんです。その子が「ぜったいに体外(受精)やるんだったら体外(受精)専門の病院に行ったほうがいい」と。それにそこの先生は結構有名で、(私にとって)「絶対大丈夫なタイプ(の先生)だから来な」って言われて(笑い)。
そのご友人はそこの院長先生の性格も見て。
「絶対大丈夫だからそこへ行きな」って言われて、それで行ったんです。
そのご友人のひと押しがなければ?
でもそこ(Fクリニック)も知ってはいたんですが、あの時あの子がうちにきてなかったら、もしかしたらまた同じ病院に行っていたかもしれないし、違う所に……。
Fクリニックの不妊治療
転院してから3ヶ月続けて採卵をされていますが、最初の2回の採卵は胚盤胞にはならなかった?
そうなんですよね。惜しい胚盤胞の直前までは行くんですけどそれにならないという感じでしたね。
その時先生から何かいわれたことは?
いや、別に先生はなんにも言わないんですよ(笑い)。とにかく”(採卵を)やる”みたいな……。
採卵して移植をどんどんしていきましょうと。
どんどん”(する)のみ”って感じですね。
この時、排卵の誘発方法というのは?
そこの病院はあまり刺激をしないので、本当に少しの飲み薬というだけ。
クロミッド?
クロミッドで。フェマーラとか。それを2分の1錠。割って。
ご主人の方の検査は?
最初の病院ではなんか何も問題ないと言われたんですけど。Fクリニックで診てもらったら全然動きがおかしい。運動率も低いし奇形率がものすごく高くて。「(自然妊娠は)なかなか難しいと思うよ」みたいな感じで言われて……。
鍼灸治療に通いだす
その間に当サロンに初診で来ていただいているんですが、どうして鍼を受けてみようと?
なんかやっぱり「いい」とネットとかで見たからですかね。
実際いらっしゃってみてどうでしたか?
それであのやり始めて急に卵の数が増えたので(笑い)
そうですね、鍼をして翌月の採卵の時は6つ……。※それまでの2回の採卵は両方とも2個ずつ
そう6つとれてます。はい。
それ以外に何か取り入れてみよう、試してみようとか思ったものはありましたか?
とにかく体を冷やさないようにということぐらいですかね。
カルテを見ると漢方薬を検討していると書いてありましたが?
ちょっとそこのデパートの中で話を聞いただけで結局やらなかったです。
胚盤胞に初めて成長
この時、採卵して6個とれて、そのうち一つが胚盤胞になって凍結。移植をして陽性は出ているんですよね。
はい、陽性はでてます。
たしかHCGの上がりが……。
最初っから悪くて、なんでもう最初の時から「これ多分ダメっぽいな」ってみたいな感じで。
先生が?
とにかくその病院って、こまめに数字を見て統計を取るみたいな病院で、その数字を見ると「これダメっぽいなみたいなー」なんて感じだったんで……なんか別にショックって言うよりも「また採卵か、やれやれまた最初からか」みたいな(笑い)。
不妊治療への向き合い方
渡辺さんは比較的前向きだった?
そういうタイプなんですよね。「できないものはできない、できるときはできる」っていう(笑い)。「そう思うしかない」っていうのがあるんじゃないですかね。うちの夫婦はわりとそういうタイプ。二人で「しようがないね」という感じでした。
ご主人の協力というのは?
特に協力も何もないですよね。男性は(精子を)出してもらうだけですもんね(笑い)。
(笑い)。これに(アンケート用紙にご主人が)書いていらっしゃいましたね。「採精するくらい」と。
そうそう、本当にそうです。でも別にそれは仕方ないことなんで。別に私は何も求めていなかったです。
稽留流産・染色体異常なし
初めて陽性が出た後は、残念ながら稽留流産。その後は少しお休みで2周期あけているんですよね。流産の後に染色体検査は?
検査しました。「してください」って言われて。
病院から?
はい、不育(症)の検査はしてないです。なんかそこの病院は不育症なんていうものはないという考えで。なんで染色体(検査)はしたけどそれはやってない。染色体(異常は)一応なかった。そうすると逆に「なんでなんだ?」ということになるらしいです。でも私は別にそんなに気にしなかったです。
手術はそこの病院で?
そうです。その日にすぐ終わる手術で、麻酔もしない。それですぐ終わって別に大丈夫でした。
お体の方はそんなつらいことはなかったんですよね?
なかったです。
着床・妊娠・つわり
その後また採卵、胚盤胞を一つ凍結。これが7回目の体外受精でした。移植して着床してHCGが……。
最初っからすごい(HCGの値が)よかったんですよね。基礎体温を計っててパッと(体温が)上がったんで。それが(前回の妊娠時と)同じだったんで「妊娠したな」と思いましたね。
そしてその後、すぐにFクリニックを受診して陽性判定をもらったということですよね。Fクリニックは何週まで?
たしか50日くらいで卒業検診があるんですね。それまでに結構通わなきゃいけなくて5回位通ったかな。でも途中からつわりで大変な思いをして行ったんで、ちょっと記憶にないんですけど……(笑い)。
つわりが厳しかったんですよね?
相当厳しかったですね。はっきり言ってこの(不妊)治療より嫌でした(笑い)。精神的にも肉体的にもつらかったです。とにかく気持ち悪いみたいな。
妊娠がわかった時の気持ちは?
わかった時は「やった、ついに」と思ったんですけど、でもそう思ってしばらくしてつわりが始まっちゃったんで……。なんかすごい飛び上がって喜ぶほどという感じでもなくて、なんかやっとできた……みたいな感じで。
この時のお仕事は?
ちょうど夏休みだったんで1ヶ月半休ませてもらって。学校関係なんでちょうど忙しくないからって感じで。
その間、当サロンにも少しお休みをしてますよね。
来れなかったです。ここまで辿りつけなくてとにかく……。
よっぽどお辛かったんですね。カルテにもとにかく臭いがきついと。
何でも臭いが気になっちゃうんですよね。(妊娠後4ヶ月くらいで)ちょっと元気になりだしたんですけど、最後の方までずっと気持ち悪かったです。出産して解放された時にはもう開放感がいっぱい。
命がけだと思った出産
(出産する時は)結構出血がひどくて、1リットル出血して。輸血まではいかなかったんですけど、あの時貧血でフワフワしてたって感じで「やっと終わった」くらいの感じだったんです。出産って命がけだなと思いました(笑い)。なかなか(赤ちゃんが)出てこなかった。結局陣痛が2日間、吸引(分娩)もしました。血圧が上がりすぎちゃって途中で無痛にしたら、今度はお産が進まなくなっちゃって。それを繰り返して、最後に私が「切ってください!」って叫んだら、無理やり先生が出してくれました(笑い)。
(笑い)
先生は「ここまで我慢したんだから下から出してあげたいんだよ」って。でも「そんなのどうでもいいから早く切ってください!」って。
途中から無痛分娩に。
無痛(分娩)にした途端、嘘みたいにあの陣痛がなくなるんですよ。「なにこれチョー楽じゃん」と思って(笑い)。ずっとこれにして欲しいと思ったんですけど、そうすると子宮口が開かなくなっちゃって。それを2回くらい繰り返して……よかった……。
「産まれてから大変だ」とみんなに言われるんですけど、私は産まれてからの方がぜんぜん楽で。あの妊娠期間と出産のことを考えるとぜんぜん楽です。あの時が一番嫌でしたね。治療期間に比べるともうぜんぜんぜんぜん(笑い)。
職場では不妊治療をオープンに
周囲の方にご相談は?
職場にはもうすぐに。上司が子供が3人いる女性で「もし欲しいんなら早い方がいいよ」と言われてたんで。(不妊治療をすると)言ったら「仕事なんていつでもできるんだから」と言ってくれて。職場の人にも結構言ってました。
他の周りにも?
上司だけじゃなく周りにも言っていて。不妊治療をしていると急に病院に行かなきゃいけなくなるじゃないですか。「明日休ませてください」というと「ぜんぜんいいよ」と言ってもらえたんで(不妊治療を)続けられたというのもあります。
すごい理解のある方々に囲まれていたということですよね。
すごいよかったんです。「職場に言えない」とよく聞くんで、そういう人(の話)を聞くと厳しいんだろうなと思います。Fクリニックは絶対に指定された日に行かないといけないんで……。
病院とその職場の環境がマッチしたということですよね。
はい
ご家族にも?
はい、言ってました。
振り返ってみて
7回も採卵されて大変だったと思いますが、こうすればもしかしたらもっと早く出産、妊娠できたかもしれないなんて思うことはありますか?
なんですかね……。とにかく病院に行ったら、なんかスッキリしますよね。できない理由というのもなんか分かったし。その前の期間のほうがやっぱり悶々とするところがあったので。
鍼灸治療が渡辺さんにとってよかったなとか、役に立ったなという点があれば。
(サロンの)みなさんと話をして、やはり不妊治療の話が通じるじゃないですか。「値が低かった」といえば「あ、それね」という感じだったので。話も通じてすごいよかった。安心感がありました。
鍼に通われてみて体の変化というのはありますか?
なんか体が温かかったです。(冷えることが)あんまりなかった気がします。
肩こりとかは?
楽だったんです、すごいその時は。
今は?
(肩こりが)すごいんです。
じゃ、やらないと(笑い)。
そうなんですよ(笑い)。
出生前診断、検査せず
出生前診断の検査をしなかった理由は?
それもちょっと悩んだんですけど。検査した後で結果が出て考えるじゃないですか。「どうしようかな」って。でも別にしないでも産まれたら育てるんだから、私の中では(出生前診断は)意味のないことかなと思ってしなかったんですよね。
ご主人も?
そういう考えでした。
不妊治療をしている方、これからする方へ
体外受精をするのはやっぱり専門のところをすすめます。行ってみてやり方も全然違ったんで。最初の病院とやり方が違う。
同じ体外受精をやっていても?
(力強く)ぜんぜん違いました。はい。
どういう点が一番の違い?
まずその薬の使い方が全然違って。最初(に通っていた病院)では刺激(をする治療)だったんですけど、でも2回目のFクリニックはそれをやると卵巣が悪くなるという感じだったんで……そこです。あとそのFクリニックは採卵するときも、すごい未熟卵も採ってくれるという感じだったんで。
これから不妊治療を開始しようと考えている方々、または治療をされている方々にメッセージがありましたら……。
わたしなんか……これメッセージかどうかわからないんですけど……私はメンタルが大丈夫なんですけど、やっぱりダメな人って結構落ち込んだりするじゃないですか。でも私の2番目に行ったFクリニックは実績があったりして、そのメンタルなんてお構い無しなんですよ。
無視というわけじゃないですけど……。
ぜんぜん、本当に無視、無視なんです。でも私はそれで(赤ちゃんが)できるんだったらそれで無視してもいいって思えちゃうんですね。でもそれを思えない人はやっぱり通わない方がいいと思うんですけど……・それは難しいですよね。なんかメンタルのケアを求めている人はいると思うけど……どっちかだと思います。不妊治療は割りきってはっきり言うと お金 と 忍耐 だと思っているんで。
不妊治療をしていると落ち込むこともあると思いますが。
あれは落ち込んだら続かないですよね。それに落ち込んで気分が沈むのがもったいない時間だと思っちゃうんで。うち旦那もそういう感じ。「できるときはできる、できないときはできない」とすごく言われてたんで。だからですかね。
ご主人の力も強かった?
ああいう性格が(笑い)。
今日はありがとうございました!
ご主人様からのアンケートのご回答
不妊治療と言っても私自身はたまに採精するぐらいで、具体的な治療の苦労のほとんどは妻が背負っていました。今思うとまったく頭の下がる想いです。
そんな妻まかせな不妊治療だったせいか、不妊治療を通し、どんなかたちにせよ子どもというのは授かり物だなあ、という想いが強くなりました。現在治療中の方の中には「何故妊娠出来ないんだ」と悩んでいらっしゃる方がいるかと思いますが、子どもは授かり物なんだからあまり深く悩まないで下さい、と言いたいです。
ご回答ありがとうございました!
聞き手の感想
渡辺さんは治療中も常に前向き、「落ち込んでいたら続かない」という言葉が印象的でした。ご友人から勧められたクリニックにすぐに転院されたことがターニングポイントになったのではないかと思います。
最初の病院で卵管造影検査をしないですぐに体外受精に進み、初診翌月にはもう採卵をされましたが、さすがフットワークの軽い渡辺さんらしい素早い決断でした。
鍼灸治療には、周期やご都合にあわせて妊娠までは約20回ほど通院なさいました。その後つわりが重かっため少しお休みをされますが、ご出産の2か月前まで鍼灸治療を継続されました。
流産や不妊治療よりも辛かったとおっしゃっていたつわりと分娩を乗り越え、元気な男の子をご出産されました。インタビュー中もお子さんを抱っこされながら「平均的な成長曲線の上をいっている♪」と笑顔でおっしゃっていました。