不妊治療を一旦休んでから体外受精で妊娠
不妊症(不育症)治療・出産体験インタビュー
不妊治療と仕事の両立の困難さを経験。退職後、体外受精にて出産に至った事例
回答者プロフィール・治療歴
平良さん(仮名)
神奈川県川崎市 39歳 ※出産時
2010年 | |
1月 | Rクリニックにて不妊治療開始。通水検査、フーナーテスト、精液検査、ホルモン検査を行いながらタイミング療法を始める。 |
5月 | フーナーテストが2回異常だったため、人工授精にステップアップ。妊娠に至らなかったため、その後子宮内膜ポリープを切除 |
7月 | 人工授精を10月までに5回行う。 カウンセリング後、体外受精へステップアップを決断。 しかしその後、引越しや仕事、精神的な疲れで、しばらく通院をやめ不妊治療を中断。 |
2011年 | |
7月 | 仕事を辞め不妊治療を再開。IVF(体外受精)で4個採卵。1個は胚盤胞まで分割し凍結。今回は新鮮4分割の卵を胚移植。着床せず。 この頃コミュニティサイトを通じて知り合った不妊治療中の人たちと情報交換をするようになる。 |
9月 | 当サロンにて鍼灸治療開始。凍結胚盤胞を移植し妊娠。月一程度引き続き鍼灸治療を継続。 |
2012年 | |
4月 | 切迫早産 |
6月 | 帝王切開にて男児を出産 約3000g |
インタビュー本文
インタビュー日時 2013年4月
◆…聞き手
不妊治療のための病院選びは通いやすい所
最初に不妊治療を始めようと思ったきっかけから教えてください。
結婚したのが35歳で、年齢もあったし「すぐ子供が欲しいな」という話をしていて。最初はまあほんとに、自己流っていうか、基礎体温とかでタイミングを図っていたんですけど、それでできないから、本とかも読んだんです。で36になるちょっと手前くらいかな、35の終わりくらいに、病院行ってる友達とかもいたので、私も病院行けばすぐ授かるかなと思って行ったのがきっかけですかね。
その病院に行くにあたってRクリニックを選んだのはどうしてですか?
病院のそういう知識とかもぜんぜんなくて、インターネットでさがして。友達から「(病院に)産科があると『ハッピーハッピー』な人と不妊治療で『はぁ(ため息)』みたいな人が一緒にいると気持ち的にきついよ」と聞いてたから、不妊治療専門のところでさがして。あとは会社がそこ(Rクリニック)の近所で、(それと)自宅との距離も考えて。
病院に行けばすぐ妊娠できると思っていた
途中で治療をお休みしてますよね?
そうですね。そうそう、なんか……そうなんか(体外受精に)ステップアップするときに、なかなかこう決断はしたものの、やっぱり金額(が高いこと)とかもあったし、あと結構頻繁に通わなきゃ(いけない)みたいなので、いろいろなかなかすすめなくて……。その間引越したりとか、仕事も忙しかったりとかもあって、(間隔が)開いちゃったのかな。うん。
Rクリニックに行かれた時は体外受精までは視野には入れてなかった?
すぐできると思ってたから、ぜんぜん(入れてなかった)。
それから人工授精を5回。
病院の先生から「もう5,6回やったらもう10回やっても20回やっても一緒だよ」みたいな感じでおっしゃってたので、じゃとりあえずと。もう私も年齢がその時36だったし、「そんな10回も20回もやっている時間はないから、とりあえず5回くらいやって、ステップアップしてみるのもありですよ」って先生が言ってくれたので、じゃとりあえず5回を目処に。病院に行く時に人工授精とか正直良くわかってなかったくらいで、全然考えていなかったですね。
仕事との両立
お仕事を辞めたのは治療に専念するためですか?
そうですね。えーと、体外受精をするときにやっぱり結構頻繁に通わなきゃいけなくなったので。「月水金休みます」とかじゃなくて、もう本当に排卵の時期(次第)だから「明日休みます」とかそんな感じで。あとやっぱり仕事のことも気になっちゃってて。ちょっと先生と話して、「仕事はいつでもできるかもしれないけど、こっちの治療は今しかできないから」と。優先順位はこっちだから専念しようかなと思って5月くらいに辞めました。
(不妊治療には)お金がすごいかかるから、仕事はしたかった……。本当はお金の面で両立をすごくしたかったんだけど、やっぱりなんだろうな……。上司の人には、同僚の人には誰にも言ってなく、不妊治療をしているとは誰にも言えなくて。
上司には、休んだりせざるを得ないから言ってあったんだけど、その上司も「え、私なんて1回でできたわよ」みたいな……。
うーん。
そういう不妊治療という知識もたぶんない方だったから、「(不妊治療を)している」っていうのは言ってたけど、なかなか急に休んだりとかは理解を得られなかった感じで……。いちおう”時短”にはさせてもらったんですが、やっぱり「すぐ休みます」とかっていうなかなかできない会社だったから……。
もう少し時間の融通がきいて理解者がいたら?
子供を産んで社会復帰しようと思うとなかなか難しかったりもするから、やっぱりうん、(仕事は)続けたかった。
(病院は)2時間待ちの5分診療とかそんな感じで、仕事して体力的にも結構きつかった。ほんとう仕事をしている時は、なんか気持ち的にも体力的にもちょっときつくて、結構夫婦げんかばっかりしてました(笑い)。
毎日病院のことばかり、精神的にすごく疲れて退職
不妊治療の方に専念するために仕事をやめようとなったのは、夫婦二人で決めたのですか?
ほんと喧嘩が絶えなくて疲れきってたし、「やめたいな……」「やめてもいいんじゃない?」みたいな。主人はやめるなとは言わなかったから。「イライラしたりするんだったら、やめたほうがいいんじゃない?」 って言って。
仕事を辞めるのに勇気は要りました?
そうですね。でも逆に、こう、ちょっと逃げたかったかな(笑い)、そういうのもあって、ちょっとゆっくりしたかったかなっていうのも。たぶん精神的にちょっと病んでた、そういうのもあったような気が。毎日たぶんそういう病院のことばっかり考えていたから、なんかそれ以外考える余裕がなくなっちゃって……毎日毎日そのことばっかり考えてちゃってたから余裕がなかった。
お仕事をやめてから不妊治療への変化とかってありますか?
やっぱり仕事をしてないっていうんで楽になった、いつでも行けるし、2時間待ちも本を読んだりとかそんなに苦じゃなくなったり精神的にはすごい楽になりましたね。時間に余裕ができた。治療自体はステップアップしているんだけど、精神的には、ちょっと余裕をもって生活できてました。
不妊治療をしていることを伝えた人
会社の方では上司の方に不妊治療をしていることをお話しされていたのですが、ご両親ですとかお友達とか身近な方の間ではどなたに話しをされていましたか?
友達には言わなくて、基本的には言わずにという形で会社の人も上司の方のみに報告をして続けてたっていうことです。(自身の親は)母だけかな。父には言ってないです。
ご主人の方の両親には?
主人の両親は知っていました。義父には、結婚後から「もう早く子供を作んなさい」ってすごいずっと会う度に言われていて、(それに)「頑張ろう」と思ってるぐらいの時も「すぐ作んなさい」とずっとずっと言われていて、それもすごいプレッシャーだったんですけど(笑い)。なんか、そうそうそう、毎回毎回言われてたから、主人にちょっと「『あんま言わないで』って言っておいて」ってお願いしてました(笑い)。それで一応、病院に行っていることはもう伝えようってことになって。もともと伝える気はなかったのだけども、そういう状況だったんで。
不妊治療のコミュニティサイトに参加
不妊治療のコミュニティサイトに参加したきっかけは?
家で暇な時間があるとずーっとネットばっかり。その(不妊治療の)ことばかり検索してて……。その当時(タレントの)Hさんが「不妊治療をしています」とメディアで公表して、それをみてコミュニティサイトを立ち上げた人がいて、たまたまそれを見て、なんか不妊治療をしているっていう共通点でぜんぜん知らない人たちと「食事会をしましょう」となって。
そういうのに参加するまでに至るのって勇気がいると思うんですが。
あ、行くときは緊張したけど、でもなんか迷ったりはしなかった。なんか面白そうだなと。
やっぱりそういう共通の話ができる方、身近でやっぱり話せる人っていう存在がいないからでしょうか?
うーん、そうですね。やっぱり、なかなかいないじゃないですか。主人に言ったところでもわかんないし。そうなんですよね。結構、そういうところ行ってすごいよかったなって思いました。
で、その後、鍼灸も始めることになるんですが。
そこで情報交換で「なんか鍼灸とかいいらしいよ」って。何回か会って、結構なんかいろいろ「私はこうしてます」みたいなことをいろいろ聞いて。鍼灸通っている人が結構何人かいて、「鍼灸いいよ」って言ってくれている人がいて、じゃ私も一度行ってみようかなと思って、そう、こちらに参りました(笑い)。
自分自身で努力していたこと、生活習慣、食習慣の改善
鍼灸の他にもお子さんを授かるにあたって気をつけていたこととか、試してみた代替療法、なんか生活習慣の見直しとか何かありましたか?
えー、なんかみんな和食和食とかって言ってた。あと適度な運動。私はなんかあまりもともと運動するタイプじゃなかったから、ひたすら散歩したり、サプリメント、あとは毎日お風呂に入るとか。たぶん少し冷え性だから体を温める努力はしてました。冷たいのを飲まないとか、あとカフェインをとらないとか。
その中で特に、これは効果があったんではないかと思うものはありますか?
やっぱり鍼灸やってよかったなと思います。はい。
鍼灸がよかったというのはどういったところが?
そうですね、なんかちょっと、あのー小柳出さんとか結構話できたというのもあるし、体外受精のこととかも結構知識がある方だったから、すごくなんかそういう意味でよかった。話もできたし、やっぱりあとなんか体も、なんかよくなっているような気があるというか。終わった後結構体も軽くなった気がして、うん。来てよかったなっていうのはすごいあります。なんかむくみ、静脈瘤とかも結構とれてきたし。産後また戻っちゃったんですけど……。でも通っている間はすごいぜんぜんむくみとかがすごい自分でもわかるくらい脚がすっきりして。そうそうそう。またやっぱり脚がつらくなっちゃってきたんですけど。
二人目不妊治療の難しさ
お二人目をとの考えはありますか?
うーんと、うーん、まだどうしようかなって思って……。でも40歳になったんで、もし作るんなら早くしたほうがいいなと思うんだけど、また病院に行くのかと思うと……。なんか病院って結構やっぱり、私の時もそうだったけど、子供をなかなか連れていける雰囲気じゃなくて、どっかに預けないとなかなか、連れて行っちゃいけないってことはないと思うんだけど。
暗黙の了解で周りへの配慮を?
うん、そうですね。なかなかギャーギャー騒いだりというの、私の時もちょっと、なんか、気持ちが……うん、なんだろう……逆のことを(して)いいのかなと思うと、預けるところもないから、なかなかどうして……(不妊治療に)通うの難しいかなと思ってます。
現実問題難しいかなっていう思いが?
うーん、そうですね。(子供を)みてもらう人がいない。
少しでもみてもらえたりとかしたら?
(体外受精の)回数を何回と決めて。ほぼもうすぐ卒乳で生理もきたから、そうですね……。うちの主人はすごい「欲しい欲しい」と言っているから頑張ろうかなっていうのもあるけど。
不妊治療の認識の変化
出産までいたって、不妊治療を始める前と実際に経験してから、不妊治療に対する考え方の変化はありますか?
病院にいけばもうできるって思っていたし、まさか自分ができないっていうの全く考えていなかった。最近結構卵子の老化とかやっとニュースになってるくらいで。私もホント病院に行ってから、「卵子って老化するんだ」って。そういう知識も全くなかったからやっぱりそういうのは早めに知っておくべきだったなっていうのはすごくありましたね。結婚する前から子供は欲しかったし、やっぱり晩婚だったから。別にいまの結婚に何も不満はないんですけど、(卵子が老化するということを知っていれば)人生設計も少し変わったのかな。
具体的には?
やっぱり子供を35歳すぎたらできにくいっていうのをもしもっとわかっていたら、もうちょっとなんか、結婚するのをもっと早めに、うん、考えたのかな。
不妊治療をする、している人へのメッセージ
不妊治療の経験を踏まえて、今お子さんほしいなと努力をしている方に対して、なにかこうメッセージはありますか?
不妊治療をする前の人にはやっぱそういう……なんだろうな。うん、子供をやっぱ年齢とともになかなかできにくくなるっというのをやっぱり知ってほしいっていうのがある。不妊治療をしている人へのメッセージ……えーと、まず頑張ったから(子供ができる)っていうのもないし、頑張ってとも言えないし……頑張ったからできるって、そういう相乗効果があるわけじゃないから、うーん、ホント出口が見えないし……。
今だからこう思うとか、そういうのでもいいんですが。
今だから……。産後1ヶ月間は結構もう大変だった時があって、産後うつはありました。1ヶ月間はちょっとこう、あんまり可愛いとか思えなかっただけど(苦笑)。それを過ぎたら、んー、なんか大変なことがあっても、(不妊治療の)あの時の大変さに比べたら(ぜんぜん)みたいな。ぜんぜんそういうイライラみたいなのは正直ないですね。不妊治療をしたからなのかな、どうなんだろうな。でもやっぱりあの時の大変さに比べたらなんか育児のそういう大変さとかはぜんぜん大変って感じではなくて、ほんとに毎日いることがすごい幸せって思える。やっぱり欲しいと思って授かったからそういうイライラしたりっていうのはぜんぜん今のところないです。そういう気持ちがベースに主人もあるから……やっぱりすごく(子供を)大事にしている。男だし、いずれどっか行っちゃうし(笑い)。
出生前診断
妊娠中の話に戻っちゃっていいですか?出生前診断、羊水検査とか病院でしましたか?
うちの病院はなんか、そういうのってしてたのかな、なんかわかんないですけど。特にしますかって全く訊かれなくて。言われないから、ま、いいかなと思ったし、私はそんなに羊水検査とか、自分からしたいっていうのはあんまり思わなかった。
不安は特にはなかった?
ま、不安がないわけじゃないけど、授かったことが嬉しかったから、んー、検査とかはあまり、あまり考えてなかったし、いまほど出生前診断っていうのはなかったですね。
本日は長いお時間ありがとうございました!
ご主人様からのアンケートのご回答
平良さんのご主人様からもアンケートでメッセージを送っていただいていますのでご紹介いたします。ご協力ありがとうございます。
不妊治療を受けるにあたって何か抵抗はありましたか?
年齢や体質によって自然妊娠が難しい環境もある中で、不妊治療は病気や怪我などで病院で診てもらうことと同じだと考えたので抵抗はなかったです。金銭面だけでも負荷を減らすため保険適用して欲しいと思いました。不妊治療を経験して妻への思いやりが深まり感謝の気持でいっぱいになりました。
不妊治療を受けているご夫婦または男性の方にメッセージやアドバイスがありましたら教えてください。
女性のほうが負担が大きい場合が多いので男性は気持ちのフォローを忘れずにして欲しいです。ストレスが体調に良くないと実感したので、難しいですが、焦らず気張らずリラックスした状態で臨んでほしいです。男性も大変ですが共に乗り越えていただきたいです。
聞き手の感想
大変落ち着いてしなやかな印象の平良さん。不妊治療と仕事の両立で大変なストレスを抱えていても、じっと耐えて表には見せず、周囲の方には平良さんの心身の疲れがわかりにくかったのではないかと想像しました。産後うつを乗り越え、今は温かい愛に守られながら遊ぶお子さんと、それをあやす平良さんのお二人の姿の周りには安らぎの空気が漂っていました。ご主人様のメッセージもとても素敵で心が安らぎました。