死産でも検査正常、無治療で出産
不妊症(不育症)治療・出産体験インタビュー
2度の流産(死産)を経験し、再度流産をするかもしれない大きな不安のなか、無事出産できた事例。
回答者プロフィール・治療歴
田中さん(仮名)
神奈川県川崎市在住 31歳(出産時年齢) ※出産時
10年くらい前に子宮頸がん検査にひっかかった経験、子宮内膜症有り、経過観察中に妊娠が判明。
2010年 | |
1月 | 一卵性双生児を妊娠。一人目は最初から育たず。二人目は心拍停止し妊娠9週にて稽留流産。手術。 |
9月 | 術後3ヶ月あけて子作りスタート。妊娠。 |
12月 | 妊娠13週で流産。2泊入院し、陣痛促進剤、子宮口を開く処置等をして出産。火葬、死産届。「すごく辛い経験でしたが我が子と対面できたのが幸いでした」(田中さん) 流産後、不育症のことを知りBクリニックの予約をとる。 年末から当サロンにて体のメンテナンス目的で鍼灸治療を開始。 |
2011年 | |
2月 | Bクリニックを受診、血液検査。 |
3月 | 検査結果は異常なし。無治療でいくことになる。 |
7月 | 妊娠。 また流産するかもしれないとの不安を抱えながら鍼灸治療を継続。Bクリニックの先生にも相談する。 |
12月 | 逆子の灸治療を開始。 |
2012年 | |
3月 | 鍼灸治療終了 |
4月 | 逆子が治らなかったため帝王切開にて女児を出産。(約2800g) |
インタビュー本文
このインタビューに関しましては、田中さんが流産の不安と戦っている気持ちを少しでも正確に表現したいため、ご本人の承諾をえまして、やりとりしたEメール本文の内容を公開して、それを元に振り返るという形をとりました。
インタビュー日時 2013年5月
◆…聞き手
Bクリニックで検査
2回目の流産(死産)の経験、またその後、Bクリニックに行くまでの経緯を教えていただけますか?
29歳の時でした。あの時は相談できる人はいませんでした。同じような経験をしている人のブログを読んだりとか、あと、ネットで死産した人たちのサイトを読みました。火葬とかの手続きは病院が教えてくれまして、書類などは旦那に書いてもらいました。
その頃、不育症という言葉を知りました。産婦人科には「3回流産したら行くのでもいいのでは?」と言われましたが、それと同時に、行くのなら紹介状を書くし、「それにしっかりしたところがいい」ということで、Bクリニックをすすめられました。実はちょうど自分で調べていたところでし、(家からも)比較的近いところでした。
Bクリニックでは、「1回目の流産は双子の流産でよくあることだから(検査の必要のある流産として)カウントしなくてもいいが、2回目は気になる」ということで検査をしました。 内診もあるところなのですが、血液検査をしました。6本くらいとりましたね。
結果は、驚くほどきれいな数値で「治療をしなくてもいいと思う」と先生に言われて、結局治療しないことになりました。治療をしないということで、逆にまた「大丈夫かな?何を頼りに?」みたいなところがありましたね。
鍼灸治療を予約するまで
ではここから田中さんとのメールのやりとりを見て当時のことを思い出しながらインタビューさせてください。
はい。
鍼灸治療をうけようと思ったのは、またうちのサロンを選んだのはどうしてだったでしょうか?
もともと冷え性というのもありましたし、もしかしたら子宮内膜症で妊娠しにくいのか。それで体質改善したいなと思って。 それでサロンのHPを見て、宮城さんの経験談を読んで、同じわかってもらえそうな人だったから。 周りの友人の中にも、実は流産した経験があるという人がいることがわかって、そういった人に話を聴いてもらいやすかったんです。
約半年後に妊娠
タイミングがずれていた感じだったんですね?
基礎体温で見るとずれていて、タイミングが遅い感じだったんですね。排卵日がずれていたのかもしれないですけど。
胎嚢が確認できてから次の2週間後の検診までの間、緊張してました?
してましたね。もう、たぶん産まれるまでホント検診が長かったですね。ずっと診てもらっていた先生は、流産の手術をしてくれた先生だったので「不安だったら気軽にきていいよ」と言ってくれていました。で、お言葉に甘えて毎週のように行ってました。
一週間に一回確認?
そうですね。"安心する"だけのためですね。Bクリニックは不育症に本当に力を入れている、とても有名な先生なので、「その先生に大丈夫って言われたんだから」って自分に言い聞かせながら産婦人科の検診に行っていました。
この頃は職場には言ってあってありました?
安定期をすぎてお腹が目立つくらいになるまでは黙っていようと思ってました。
ご両親には?
前回の流産を過ぎるくらいまでだから、14週くらいに伝えました。知っているのは流産経験をした友達数名と旦那と、会社の人では一人だけ。会社の人はお子さんはいないんですけど、子供もいらないっていうタイプの人だったんですけど、流産の経験も話したことがあって、その人に言ったらお腹が目立たない洋服とか貸してくれたりとか、チュニックみたいなのとか。
すぐに出血
すぐに軽い出血があったんですよね。病院で何か処置はしましたか?
いや、特に腹痛とか量が増えなければ大丈夫ということで安静にしていただけで
漢方薬は飲んでました?
ずっと当帰芍薬散(ツムラ)を飲んでました。これが安心材料みたいな感じでしたね。治療がなかったから。
週数が増えるにつれ不安が大きく
この頃たぶん不安はピークですよね?
あー、そうですね。たぶん……前回の流産の週数、13週までは心臓が痛かったですね。
気持ちの対処はどうしてましたか?
宮城さんに聴いてもらったりとか、友達にメールしたりとか、(Bクリニックの)先生の「やることはやったから天命を待つ」とか、だから大丈夫なんだと、繰り返し自分に言い聞かせてたところですかね。
病院に電話してますね。
この頃、赤ちゃんの大きさで経過を判断するというところがあるので、大きさが変わっていなかったら成長が止まってる、と思っちゃうので。誤差もあるんですけれども。それが誤差とはまだこの頃は思えなかった。たぶんネットで調べて小さかったらダメだったんじゃないかというのがあると思うですよね。ネットで調べない方がたぶんいいんですけれどね(笑い)。何か安心できる材料を必死に探していた時期ですね。
子宮頚管が短め、羊水は少なめ
水分をとると羊水は増えるものなんですか?
羊水が増える時期というのがあるらしく、ある時期まではそうみたいですね。
会社にはこのタイミングで言ったんですね。
会社には5ヶ月くらいの時に言ったんじゃないかなと思うんです。もうお腹が出てきそうで外から見てもそろそろわかるだろうという頃。上司も私が2回流産をしていることを知っているので、たぶん「こんな遅くに」とは言わないだろうなとは思ったので。
反応はどうでしたか?
ぜんぜん大丈夫でした。
羊水は基準値内に
もともと水分をあまりとらなくてもいいタイプだと思うんですけど、意識的に水を飲んで、羊水は大丈夫になってますね。
基準値内にということでこの辺から安心しました?
うーん、安心できるかなーって。
逆子だと判明
逆子ですね。たしか「回りにくそうだね」と誰かに言われませんでしたか?
えぇ、たしかに言われましたね。
大きさのせいでしょうか?けど羊水は基準値内ですよね。
最後のほうでちょっと少なめかなとは言われたと思うんですけど。たぶん大きさもちょっと小さめで、羊水もちょっと少なめだから結局回らなかったんじゃなかったかなと思うんですけど。
へその緒が巻き付いている
メールに書いてあるとおり逆子を治す姿勢はしてましたか?
やってました。もともと左を下にするのがが楽だったので、右を下にするとなかなか寝付けなかったのですが、結局、ずっと右が下のままでした。
帝王切開を覚悟
帝王切開の日が4月初めなんですよね。
逆子が治らないので、本当は38週で帝王切開しなきゃいけないんですけど、院長先生がたまたま「年度末って気にする?」って訊いてくれたので、「実は保育園の関係もあって4月xx日(以降)がいいんですけど」って言ったら、「じゃあ4月xx日に帝王切開をしようか」と言ってくれて。
そういう人が多いんですかね?
普通の分娩の人たちでも年度末の方はみな訊いているみたい。で過ぎても産まれて来なければ誘発剤とかうって自然分娩の人たちも調整するみたいです。私の場合大丈夫なんですか、40週を過ぎてしまうんですけどって言ったら「ん、でも大丈夫じゃない?」みたいな感じでちょっと軽い感じの院長先生なんですけど。結果、それがよかったんですけど。
帝王切開の場合、先に陣痛破水がきちゃうと危険なので、病院はリスクよりも安全に産ませたいというほうが多いので、でもそのリスクを承知のうえで4月xx日でいいよと言ってくれたので。最悪、もし陣痛破水が来て降りてきている場合は、逆子のまま下から産むこともあるからねと言ってて。たぶんそういう経験をしたことがある先生だからそう言ってくださったと思うんですけど、他の病院だったらまずないかなと。結果4月xx日の早朝に陣痛が来て病院に行ったんだけど、まだ子宮口開いていないから、じゃあ手術時間まで待とうかと言われて。14時まで待って。陣痛のまま。腰がいたいとかそういう経験ができたからある意味よかったんですけど。
鍼灸治療終了、帝王切開にて出産
マタニティライフはどうでしたか?
長かった。やっぱり楽しめないですよね。怖さのほうがあって。結局無事に産まれるまでは。
サロンは田中さんにとってどんなお役に立てたでしょうか?
経験している宮城さんと話ができるというのが一番大きかったですね。気持ちの部分は体にでてくるじゃないですか。身体のメンテナンスと両方できたっていうのがよかったですね。
編集者からの質問
(ここで同席していた編集者もいくつか気になる点が湧いたので直接質問をさせていただきました。以後 ◆聞き手…編集者)
治療に来て何回目くらいから鍼が役に立っているのがわかりましたか?
身体が軽くなったり、温かくなったりしたのは結構最初のほうからありましたね。たぶん体温が高くなったのがわかりやすかった。もともと35度台が36度台になったのが、一番違うかなと思ったところですね。やっぱり妊娠しやすい、しにくいのは体温で変わると思っていたので、メンテナンスという意味ではいい形に戻すという効果があったのではないかと思いますね。
相談できる人、相談できない人はどうやって決めてましたか?
基本、子供のいない方には妊娠の話はしていないんですね。私が会社の先輩で唯一話した方は子供はいないけど、もともと子供はいらないという人だったし、もともと信頼関係があって、職場のストレスも聴いてくれていた方で、本当に例外の例外ですね。妹のように可愛がってくれていた方なので。あとは妊娠が順調だった方には話しても流産経験は全くわからないし、相手も回答に困るんですよね。どう励ましていいかわからない。今となっては(抱っこしているお子さんを指して)この子がいるので、実は流産したんだけどっていうのは気軽に言えるようになったんだけど、それまでは全然言えなかったですね。
その言える人、言えない人の判断基準はどこらへんでしょう?
具体的には言えなくて、女性特有かもしれないですけど、直感的な信頼関係ですかね。基本的にはほとんど言ってなかったですね。相手が負担になってしまうので。職場は言わなければいけない事情もあったのでしようがない部分もあるんですけど。休みの関係で。
職場以外の人でしたら、誰にだったら悩みを話せたでしょうか?
たぶん、ネットとかじゃないでしょうかね。ネットの死産経験者とかのサイトがあるので、そこにいよいよだったら書き込んでいたんじゃないかなと気がします。そこまではいかなかったですけど、だいぶ読んでいるだけでも気持ちが変わったので。励みになるというか。あとは宮城さんに聴いていてもらってましたけど、やっぱり経験者じゃないとどうしてもわからない話なので。言って気が晴れる場合と、相手の受け止め「ただ聴いてもらう」というだけを求めているのか、そこに「あーわかるよね」という共感を求めるのかは人によってたぶん使い分けるというか。共感という意味で私の中では宮城さんは大きかった。
流産を経験した人として、過去に流産経験をしていて今妊娠をしている方にメッセージがあればいただけますか?
いくら大丈夫と言っても、本当に気休めにしかならないと思うんですよね。当事者の、しかも現在進行形の方だと。だからなんか、自分の不安をもし聴いてもらえて共感できる人がいれば、遠慮しないで話してくださいっていう感じですかね。ためないで。でもいない場合は困っちゃうんですけど。それがねー。私が聴けるんだったらいくらでも聴いてあげられるというところなんですけど……。産むまでが本当に不安の戦いなので。その不安で赤ちゃんに悪い影響がいってしまうんじゃないかっていうのが大きい。うーん、(お腹を指して)こっちは順調に育っているのに、自分の不安だけでみたいなのはあるので、そういう意味ではためるのはやっぱり精神衛生上よくないかなと思っているんですけど。
自分のためじゃなく、子供のためによくない?
そうですね。せっかく(お腹を指して)こっちは元気で育っているのに、こっちの生命力を信じてあげられてないというところがあるので。
では、流産経験をして次の妊娠が怖いという方には何かメッセージはありますか?流産後、妊娠は怖いと感じましたか?
怖いと思いましたよ。思いましたね……怖い半面、子供も欲しかったので、あと何回だめだったらあきらめようみたいのはありましたね。流産経験すると体にも負担があるので。3回目流産したら次どうしようかなーとかは考えはしましたね。けどとりあえず3回目はがんばってみようかなみたいな。怖いけど子供が欲しいという気持ちが強かったので、そこだけですね。
そういった話は妊娠する前にご主人と話はしましたか?
あんまりしなかったですね。そこに関しては言わなくてもわかってたと思うので。なので「別にいなきゃいないで別に」みたいなとずっと言っていたので。絶対子供をという旦那でなかったので、それは救いだったと思うんですけど……。旦那は流産処置の入院中、ずっと休みをとってくれました。何かいうわけではないけど旦那なりに何か励まそうとしてくれていたんだと思います。
本日は長い時間お付き合いくださいましてありがとうございました!
聞き手の感想
二度の流産(死産)を若くして経験してしまった田中さんにとっては、本来なら嬉しいはずの妊娠が、無事に生まれてくるまではまだまだ安心できないと、手放しでは喜べない不安な気持ちを抱えながらの妊娠生活だったようです。田中さんの気持ちが痛いほど伝わってきました。当院に通い始めてから7ヶ月後に妊娠、36週まで通ってくださいました。 田中さんのお子さんを見つめる優しい笑顔に私たちまで嬉しくなったインタビューでした。
編集者の感想
インタビューの受け答え、お話の内容から、田中さんは理性的な方という印象を受けました。しかしメールの内容を拝見すると、お腹のお子さんの状態に関して、どうすることもできないことに対して様々な不安を感じて何度も相談をしていらっしゃいます。確かに過去のつらいご経験がより一層そうさせているのかもしれませんが、この理性を超えた一連の感情の源は、我が子の健康を思う、母性的な強い気持ちなのだと思います。女性は妊娠したらすでにもうお母さんなのですね。今回のお話でよくわかりました。