冷え性(冷え症)
冷え性とは
冷え性の定義は様々ですが、一般的には体温に関係なく手足が冷たかったり下腹部に冷えを自覚的に感じる状態をいいます。または、体の特定の部位だけが冷たく不快に感じられる状態が6ヶ月以上続く場合をいいます。
女性特有の病気である月経異常・更年期障害・便秘・不妊は特に冷え性が大きく関わっているといわれており、東洋医学では冷えを特に重要視しています。
女性の2人に1人は冷えを抱えているといわれますが、冷え性を理由に病院に行く人は多くはありません。万病の元といわれる冷え性は様々な症状を引き起こしますので、早いうちからしっかりと対策をとることが大切です。
冷え性の症状
主な症状には次のようなものがあります
胃腸の機能低下による症状
- 下痢
- 便秘
- 腹部膨満感
- 食欲不振
- おなら
- げっぷ
- 吐き気
血行不良による症状
- 頭痛
- 肩こり
- 腰痛
- 膝の痛み
- 顔や体のむくみ
- 耳鳴り、めまい、立ちくらみ
骨盤内の血行不良による症状
- 月経痛
- 月経に伴う便秘
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 卵巣嚢腫
- 肌荒れ
- ニキビ
西洋医学の冷え性(冷え症)
冷えは西洋医学では病気ではなく、あくまで不定愁訴のひとつとして考えられています。原因は次にあげるものが考えられています。
原因(成因)
- 筋肉量の低下(運動不足)
- 食生活の乱れ
- ストレス
- 服装(薄い服装・身体を締め付ける)
- 自律神経の乱れ
- 新陳代謝の低下
- 腸機能の低下
- 貧血・低血圧
- 無理な減量
- 喫煙
冷えを起こす主な病気
病気によって冷えが起こることもあります。主な病気には次のようなものがあります。
- 心疾患
- 心臓のポンプ作用により全身に血液を送り出している為、心機能に障害があると体の末端まで血液が巡らず冷えを感じます。
- 甲状腺機能低下症
- 甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。甲状腺ホルモンは体の新陳代謝を促進するので、低下すると身体全体の機能が低下しやすくなり、皮膚の乾燥・倦怠感やむくみ・全身の冷え月経異常などの症状が出ます。
- 貧血
- 貧血は赤血球中のヘモグロビンの低下によるもので、血液の成分が薄くなり全身に十分な酸素が行き届かなくなり、血流も悪く手足に冷えを感じます。
- 膠原病
- 免疫システムの異常から全身器官や細胞をつなぐ結合組織が阻害され、さまざまな器官が障害される病気です。関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・強皮症などがあります。
全身の冷え・ひどい疲れ・動悸・手のしびれ・指先が白くなるなど、当てはまる症状がある方は病気が原因で冷えを感じている可能性があります。たかが冷えとあなどらずに、かかりつけの先生に相談してみてください。
東洋医学の冷え性と鍼灸治療
東洋医学で”冷え”は病気の重要なサインとして捉えられています。「気」「血」「水」のバランスの失調により冷えが起こります。
例えば気の循環が停滞すると気鬱になり、ストレスなどを引き起こし冷えの原因になります。また瘀血はストレス・運動不足・過食・骨盤のズレなどで生じ体温の低下をもたらします。 水が停滞すると水毒となり冷えを起こします。
冷えを起こす東洋医学的な主な証や原因には次のようなものがあります。
- 腎陽虚
- 血虚
- 傷食(飲食不摂)
- 水毒
- 瘀血寒湿
よく使用される漢方薬
鍼灸治療の方針
鍼灸治療で患部の循環改善を促します。末梢の循環の改善を図るために手足末端部と腰部・仙骨部を、自律神経の乱れからくる冷えに関しては脊柱の際や背部の経穴を中心に治療してまいります。
治療の頻度としては、本来の身体のバランスをとっていくことが目的になるので、無理の無いように2,3週間に1回のぺースで継続的に来られることをおすすめしております。
冷え性(冷え症)の養生法
ご自身でも冷え性を少しでも緩和することができます。
食材で冷えを改善
食材には体を温めるものと冷やすものがあります。多くの食材において、原産地が暖かい地域のものは体を冷やし、寒い地域のものは体を温める要素があります。また土の上にできる物は体を冷やし、土の中にできる根菜類は体を温める作用があります。体を冷やす作用のある食材に関しても火を通せば冷えの作用も弱まりますので大丈夫です。
体を温める食材 | 体を冷やす食材 |
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果物もビタミンが豊富で体や美肌には欠かせない食材ですが、水分量が多いため体を冷やしやすいので、果物は夜よりも朝食べるのがいいでしょう。また水分を飛ばしたドライフルーツは生のものに比べミネラルや食物繊維が豊富に含まれるので、甘いものが欲しくなったら生のフルーツや白砂糖を使ったお菓子よりもドライフルーツを食べるようにしましょう。
食事の量で冷えを改善
無理な減量などで食事量を減らすと、熱の元となるエネルギー源が足りずに冷えの原因になり、また食べ過ぎや食事の時間が不規則だったりすると胃腸に負担がかかり冷えの原因になるので、一日三食規則正しく腹八文目を心がけましょう。
ぬるめの湯船でゆっくりと入浴
冷えが強い方はついつい熱めの湯船を好みますが、熱いお風呂は交感神経が活性され血管が収縮し血行が阻害され末端までしっかり温まらず、一気に体表温度が上がりますが、湯冷めもしやすくなってしまいます。また熱い湯船は体の必要な油分まで取ってしまい、肌の乾燥につながります。
それに比べて、ぬるめの湯船(38℃~40℃)に20~30分を目安にゆっくり浸かると、リラックス効果が高まり、副交感神経が優位になり毛細血管が拡張し、細部まで血液が行き渡って、熱めの湯船よりも湯冷めしにくく、また安眠へと導いてくれます。 深部の冷えが強い方はお腹や臀部・大腿部の内側などにシャワーで直接温めるのも効果的です。
質の良いパジャマで疲れと冷えを解消
体をきちんと休息させないと疲れがとれず、体力も衰えて冷えに拍車がかかります。また、睡眠中は皮膚の新陳代謝が盛んになり汗をかきやすいので、その寝汗で身体を冷やさないためにも、パジャマは吸湿性の良い素材(絹・木綿)を選びましょう。血行不良にならないよう身体を締め付けないゆったりとしたパジャマを選びましょう。
適度な運動と呼吸法で熱量アップ
体を動かして適度な運動をすると熱量が上がります。運動というと難しく考えがちですが、体を動かす習慣をつけると考えて、積極的に階段を使ったり、少し歩幅を大きく早歩きにしてみたり日常の中にうまく取り入れてみましょう。
また女性の多くは胸式呼吸のため呼吸も浅いといわれています。鼻から臍下丹田(お臍の下)にまで酸素を届けるイメージでゆっくり深く吸い込み、口から細く長く吸った時の倍以上の時間をかけて息を吐きます。 無意識に行われている呼吸を意識してみると意外と難しく、呼吸法をしっかりするだけで身体に酸素が多く取り込まれ身体も熱量が上がります。
冷え性でお悩みの方へ
冷え性は女性疾患の病気のサインかもしれず、冷えと低体温は女性にとって大敵です。「体質だから仕方ない」とはあきらめないで、体質改善のためご一緒に生活習慣の見直しと鍼灸治療をおこなって、手足の先まで温かい体になりましょう。