東洋医学における眼精疲労の治療
東洋医学における眼精疲労の考え方
東洋医学では全ての臓腑の精気が目に注いでいると考えられていますが、特に肝・腎・血との関係が深いとされています。目を酷使したり、ストレスや睡眠不足などが原因となり、臓腑の気のバランスが崩れることにより、次のような証(状態)になり、目に様々な症状が現れると考えられています。
肝血虚証による眼精疲労
肝の働きが衰えたり血が不足することによって肝血虚証になります。肝血(かんけつ)は目と深く関係しています。肝は血を蓄え、全身に送る働きをしていますが、血が少なくなることにより栄養がいきわたらなくなり、全身様々な症状が現れ、特に目に症状が現れます。栄養不足や胃腸虚弱、月経不順、自律神経失調症などが引き金となります。ドライアイ、 目のかすみ、 視力低下、 めまい、 手のしびれ、 耳鳴り などが起こります。
肝腎陰虚による眼精疲労
肝は血を蓄える働きをもち、腎は精をたくわえる働きを持ちます。精がなければ血は造れず、血がなければ精を造れません。お互いが不足していることで症状を引き起こすのが肝腎陰虚証です。不眠、 耳鳴り、 視力低下、 目のかすみ、 足腰が重だるい、 顔や四肢のほてり などが起こります。
眼精疲労の鍼灸・マッサージ治療
直接的に眼の血流を良くするには眼筋体操やホットパックが効果的です。しかし眼が悪くなれば他の器官も影響を受けていますし、他の器官の具合が悪いから眼の具合が悪くなっているわけですので、「眼だけ具合が悪い」という方はたいへん稀(まれ)で実際ほかにも不調を訴える方がほとんどです。
鍼灸治療やマッサージでは、経穴を使って関連する神経を通じて刺激を与えたり、眼筋体操ではできない体全体の治療をして、間接的にそして包括的に眼精疲労の治療をしていきます。眼精疲労の鍼灸治療は鍼灸院に限ったことではなく、眼精疲労治療に熱心な眼科では鍼灸治療・マッサージによる治療をとりいれています。
鍼灸治療ですること
一般的に鍼灸治療では眼精疲労の症状の緩和とともに眼精疲労の原因となっている疾患の治療を同時に行っていきます。つらい症状を緩和しつつ、根本的な原因となっている体内のバランスを修正し改善していくことで、眼精疲労になりにくい身体をつくります。特に肝・腎・血を補って改善をはかるのが一般的です。
主に眼の周囲に直接的に鍼治療をするほか、頭、腕、脚、背中に鍼灸治療をすることが一般的です。直接肌にのせるお灸を顔に行うことは当院では原則ありません。
治療自体以外で大切なこと
当院では眼精疲労を軽減する眼筋体操はとても大切だ考えています。また眼精疲労に密接に関連のあるストレスの緩和もとても重要なことです。ストレスは心身にとって"万病の元"。ストレスの元となっていることについて話をするというだけで症状が緩和されることはよくあります。
なお当院は個室制であって、またほとんどの場合において同時に一人の施術者が複数の患者さんを治療するのではなく、一対一で患者さんを診ています。他の患者さんの耳を気にすることなく、お悩みやそのつらさ、その原因となっている背景全てについてお話しをしていただくことも可能です。当院はこの環境こそ重要だと考えています。
鍼灸治療のペース
鍼灸治療のペースはその重症度にもよりますが、週に一度から二度くらいの通院が最適です。それ以上の通院は体が持っている自然治癒力を活かす東洋医学の見地からすると負担が大きいのであまりおすすめしていませんが、体力に余裕があり通院自体の負担が少ないようでしたら構いません。
当院では治療に頻繁に通うことよりも、生活習慣の改善やストレスの緩和をしっかり併せて行っていくことが眼精疲労の治療に最も重要なことだと考えています。