東洋医学における顔面神経麻痺
古くからみられる顔面神経麻痺
東洋医学的に顔面神経麻痺を調べてみると、古くは黄帝内経(中国最古の医学書)にも「口眼歪斜」として記載があり、昔から顔面神経麻痺の治療が行われていたことがわかります。風邪や寒邪が顔面の脈絡に空虚が生じている者に入りこみ、そのために経脈のながれが悪くなって栄養が行かず、筋肉が弛緩して動かなくなり顔面神経麻痺になると書かれています。
顔面神経麻痺の東洋医学的な治療
治療対象となる顔面神経麻痺の種類はベル麻痺、ラムゼイハント症候群、外傷による麻痺です。中枢神経性の顔面神経麻痺であれば、適切な医療機関で適切な治療を受けることを強くおすすめしますが、東洋医学の治療は体全体をみて体の回復力を高めるものであるため、もしも治療に通う負担が大きくないようであれば、病院等の治療と併行して鍼灸・マッサージ治療を行うことをおすすめします。
治療内容は、顔面神経がどこで障害されているか、またその程度でかわります。主に耳回りの症状が強い場合は。少陽経の顔面麻痺として、主に顔面筋の症状が強い場合は、陽明経の顔面麻痺として、そのほか長期化してしまった場合には、肝血虚タイプとして治療を施していきます。
少陽経?陽明経?肝血虚って何?と思われた方も多いと思います。東洋医学の考え方はとてもシンプルなのですが、専門用語が少し親しみにくく説明も難しいので詳しくは問診時また治療を受けながらお尋ねください。
なお末梢神経を鍼灸治療で刺激すればするほどよいという訳ではありません。末梢神経の回復はデリケートなものです。後遺症を招く恐れのある過度な運動訓練や強いマッサージは当院ではおすすめしていません。また当院では基本的に顔面神経麻痺に対して低周波通電療法を行っていません。
鍼灸治療の効果
鍼灸・マッサージ治療が顔面神経麻痺には効果があると多くの患者さんが実感しています。それはもちろん障害部位や全身の血流改善による効果もありますが、それに加えて、心身の緊張緩和が全身的に起こりリラックスをすることで、自律神経、特に副交感神経側の働きが改善し、それによって体全体の免疫力・回復力が増すことで顔面神経の修復が早く行われるためということもあります。
回復の程度は、もちろん障害の部位やその程度にもよりますが、その人が持っている回復力にも大きく左右されます。ストレスを抱えていたり、他の病気、特に胃腸などの消化器系の機能が減退し食欲不振等の症状があれば、体のエネルギーが不足してしまい回復は難しいものになってしまいます。
主訴のみに注目せず、心身全体の状態を診て、免疫力や回復力の向上を重視する東洋医学の鍼灸治療が顔面神経麻痺に対し効果があるのは当然ともいえます。