顔面神経麻痺とはどんな病気か?
顔面神経麻痺とは
顔面神経麻痺とは、主に顔の筋肉を動かすための神経である顔面神経に、なんらかの原因によって麻痺が起こり、まぶたや口、おでこの筋肉を動かせなくなるものです。特に20歳代、50歳代に多く発症します。思ったような表情を作れなくなるほか、瞬きがしにくくなったり、うがいをした時に口から水がこぼれたりして食事がしづらくなることがあります。また味覚や聴覚に障害がでることもあります。
多くは顔の左右片方だけ麻痺する片側性麻痺ですが、左右両方に麻痺がでる両側性麻痺もあります。
顔面神経は主に運動神経
顔面神経は一部の機能を除いて主に筋肉を動かす運動神経であって、顔に何か触れたのを感じたり、または「痛い」といった感覚を伝える感覚神経ではない点にご注意ください。顔面神経麻痺によって顔の感覚が麻痺するわけではありません。
ところで"顔面神経痛"という言葉を聞いたことはありませんでしょうか?さきほどの説明のとおり顔面神経は運動神経であって感覚神経ではないため、痛みを表す言葉に"顔面神経"を使うのは正しくありません。顔の感覚神経は三叉神経というものですので、正しくは"三叉神経痛"といいます。
顔面神経麻痺の主な症状
顔面神経麻痺の主な症状は次のとおりです。運動神経の麻痺している部位によって現れる症状が異なります。
- 額にシワをよせられない
- 目を閉じられない、目が乾いてしまう、涙がでる
- 口の端(口角)が下がっている
- 飲み物がうまく飲めず口から出てしまう、よだれが垂れてしまう
- 口笛をふくように口を尖らせる(すぼめる)ことができない
- うまく食べ物を噛めない。飲み込むことができない
- 音が大きく聞こえたり響いたり感じる
- 味があまりしない。味覚が鈍感になる
- ろれつが回らない
- 耳の奥の方が痛い
- 涙や唾液が出にくい、など
顔面神経麻痺の程度
顔面神経麻痺の症状の重さを判断する検査基準でよく使われるものに、柳原法とHouse-Brackmann法の2つがあります。それぞれの基準によって正常か完全麻痺かどうかなど判断が行われます。※他にSunnybrook法などもありますが細かいので省略します。
柳原法(40点法)
次にあげる10の検査項目ごとに評価した点数を足していき合計点数で判断します。正常の場合を4、部分麻痺を2、高度麻痺(完全な麻痺)を0として、合計40点満点中、38点以上で正常、10点以上を不全麻痺、8点以下を完全麻痺と定義しています。
- 安静時に左右対称になっているか
- 額にシワを寄せる
- 軽く目を閉じる
- 強く目を閉じる
- 片目を閉じる
- 鼻を膨らませて動かせるか
- 頬を膨らます
- イーと歯を見せる
- 口笛を吹く
- 口をへの字に曲げる
House-Brackmann法
次の表にあるような基準でそれぞれ麻痺のグレードを定義します。本当はもっと細かく項目があるのですがわかりにくいため、顔全体を見ての評価だけ書いています。
麻痺の |
症状 | |
---|---|---|
1 | 正常 | 正常 |
2 | 軽症 | 注意してみないとわからない程度、安静時は正常、力を入れると少し左右の表情が異なっている。 |
3 | 中等度 | 明らかに麻痺はあるが左右の差はハッキリとまではいかない。目をつぶることはできるものの、少し他の筋肉も動いてしまったり、または筋肉が動きづらかったり痙攣がある。 |
4 | やや強い | 明らかに麻痺があり左右差もハッキリしている。目をつぶれない。他の筋肉も動いてしまったり、筋肉が動きづらかったり痙攣がある。 |
5 | 強い | わずかに筋肉が動く程度、明らかに左右の表情が異なっている。 |
6 | 完全麻痺 | 完全に動かない。 |
それでは次のページで「顔面神経とその顔面神経が動かす筋肉」についての説明をご覧ください。